あるキング

弱小地方球団とそこで活躍する超英才教育選手の誕生からの物語。野球選手としてものすごい能力を持ちながら悲運な運命を辿る主人公にとても複雑な感情が生まれます。

物語の展開は至ってシンプルでサクサク読み進められますが、他の伊坂幸太郎作品にもあるような微妙な読後感の残る作品。他にもあんなこと、こんなことと書きたいのですがどれもネタバレになってしまう… ^_^;

シェイクスピアの「マクベス」がストーリーの軸になっているのですが、残念ながら自分は「マクベス」の中身を知りませんでしたし、知らなくても「あるキング」は楽しめました。

続編が読みたい、そう思わせる作品でした。

境遇

生まれてすぐに施設に預けられ育った絵本作家と新聞記者の二人の女性の「境遇」を取り巻く物語。とでも言えばいいのかな、湊かなえ作品としてはかなり内容が薄いです。

2,3年前に単発ドラマとして放映されていたのを少しだけ観た記憶があって、その原作だったかなということで読んでみたのですが、ドラマの内容と寸分違わず。

大抵、原作よりもドラマの方が端折られていることが多いので「なぜ?」と思ったのですが、答えは簡単でドラマのために書き下ろしされたものだったからです。最初からドラマ化することを念頭に書かれたものだったのですね。

冒頭にも書きましたが、とにかく深く複雑な湊かなえ作品から比べれば圧倒的に薄い内容で、がっかりするかもしれません。ストーリーとしては悪くは無いのですがありがちな結末で新鮮味もありません。個人的にはあまりおすすめ出来ない一冊でした。

ABC創立60周年記念スペシャルドラマ「境遇」

空飛ぶタイヤ

実際にあったトラックの脱輪事故とリコール隠しをモチーフに財閥起業が抱える闇の部分と倒産寸前に追い込まれた運送会社の社長の他それに対決する人々を描いた作品。

もちろん作品としてはフィクションなので会社の名前などは実在しないものですが、実在の事故やリコール隠しを知っていればどの会社のことかわかります。

特にこの物語については、モチーフとなった事件があるので結論はかなりハッキリ見えているわけですがそれでも面白い、「どうなるのか?」ではなくて「どうやっていくのか?」という結論ではなくて過程が面白いんですね。

ドラマの「半沢直樹」から完全にハマってますが、この物語も形としてはほぼ同じで、

  1. 権力や地位を利用して悪どいことするやつがいる。
  2. それに立ち向かっていく主人公がいる
  3. 戦う主人公を支える家族がいる
  4. 戦う主人公を支援する同僚とか友人がいる
  5. 家族の方でもちょっとしたトラブルが起こる

みたいなフォーマットがあるかなという印象。

まぁ、言って見れば現代の「水戸黄門」ですね「水戸黄門」とか「遠山の金さん」に通じるところがあります。人間ってそういうのが好きなんだと思います。

次は「ロスジェネの逆襲」かな。