最後の最後、犯人は明かされないまま終わる推理小説。本編の後に袋とじの正解のヒントみたいなのがありますが、ズバリの正解が載ってるわけではないので、分からなかった人には、消化不良みたいになるかもなぁ…

犯人を当てるんだけど、トリックを暴くとかそういうのではないので、そういうところに期待しているとやや期待はずれかも。ストーリーとは別に論理的に考えたらこれしかないって形で論理パズル的に犯人が導かれてしまうので…ストーリーそのものも、それほど引き込まれるような話でもないので、トリックを暴くとかそういう形がよかったなぁ…

こういう本を読んでいると、若林はApple信者だからとか、ジョブズ教だからとか言われそうなんですが、まぁそういわずに素直に読んでみることが必要かと思う本です。

素直に私たちに欠けているものが何なのか?ということが書いてあると思います。ここに書いてあることが全てだとは思いませんが、ここに書いてることが無くてもいいというものでもない。そういう意味ではごく当たり前のことですが…

共感するのは、”自分を信じる”、”情熱を傾けられることをする”等々いっぱいあるのですが、耳が痛いのは”メッセージの名人になる”。分かってはいるのですが、これがなかなか難しい…多分、ここが最大の難関です。きちんと表現出来ない理由、それはまぁ色々とあるのですが…

実は、この手の本の感想を書くのはとても難しいのです。なぜかというと、この手の本のテーマが今の自分の職業に直結しているから。思ったことを書くと赤裸裸な内容になってしまう可能性が…だから読むわけでもあるんですが、あまり思ったことをそのまま書けないのです。

で、別に後だしじゃんけんをするつもりはありませんが、この本に書いてあることは大抵知っていたり、こういうことじゃないかなぁというレベルで自分でも考えていたりすることだったりしますし、おそらくそういうことが書いてあるんじゃないかなと思っています。

だったら、なぜ読むのか?それは頭の整理のためです。なにしろこの業界いろんな要素が絡み合っていて、いろんな観点があって難しいんですから…

もっとも整理できたからといって、その先にあるものが見えてくるのか?というのは別で依然として問題は残ってきますし、そこは自分で考えないといけないんですけどね。そういう意味で一番興味深かったのは第6章ですね、特にソニーのところ。
ここに関しては、正直「そうかな〜?」と思ってます。ソニーの場合は、メーカーという側面以外にコンテンツホルダーという性格を持ち合わせているところもありますので単に他のメーカーと同じ事情ではないかなと思います、具体的には書かないけど…

東日本大震災で起こったこと、影響を与えたこと、それらによって気付いたこと気付かされたことが有ったという点もその共感できます。TwitterのRetweetの意味、Twitterの中のつながりがどうやって広がって行くのか?ということを東日本大震災を機に気付いた方も多いと思います。
色んな意味でネットワークが制御可能であることに気付いた方も多いと思いますし、そこにビジネスチャンスがありそうだということに気付いた方もいるんじゃないかと思います。そういう意味でも東日本大震災は大きな影響を与えたと自分も思っています。

この本、出たのがAppleのWWDCの前、つまり”iCloud”の発表前なんですよね。変化の激しい分野ですから”本”という媒体では起こりがちなことなんですが、”iCloud”の発表を受けてからの執筆だったとしたら全体的にどういう内容に変わっていただろうか?というのが気になります。逆に言うと、”iCloud”の発表後の今、この本を読むと多少時代遅れ感が否めない。

“本”という媒体の限界であり、そのことはこの本のテーマとして書かれているスマートデバイスが壊しつつあるところであるというのもなかなか面白いですね。最近は、改訂版とかいうことで前の本を少し書き直したものを出すケースもあるみたいですが、それに同じ金額を出すのは抵抗がありますね。
こういったところを考えても新しい出版の形というか有償の情報発信の仕方とかありそうです。
でも、それら気付いたことが自分の仕事に生かせるかどうかが問題…

最後に、この本で気になったのは誤植の多いこと、覚えてる範囲で書くと…

誤:搭乗
正:登場

誤:後継
正:後傾

誤:LET
正:LTE

などなど、多分他にも有ったはず…特にLTE→LETの誤植は一瞬何のことかわかりませんでした(笑)